SOGIE/ LGBTQ+ コラム
多様性が尊重される社会の実現に向けて、LGBTQ+やジェンダーに関する理解がますます求められるようになっています。しかし、「正しい知識を持っているだろうか?」「どのように接すればよいのか?」と不安を感じる方も少なくありません。まずは、性のあり方が一人ひとり異なることを前提に、多様性について考えてみませんか?
本記事では、基本的な言葉や概念を整理し、誰もが安心して生きられる環境づくりのヒントをお届けします。
■ SOGIE(ソジー)について
SOGIE(ソジー)とは、性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)、ジェンダー表現(Gender Expression)を組み合わせた用語です。
SOGI(ソジ)と表現されることもあります。性的指向と性自認を指す言葉であり、昨今はSOGIハラスメント(性的指向や性自認を理由としたからかい、いじめ、暴力)として使われることが増えてきました。
さらに身体の性的特徴(Sex Characteristics)を加えた、SOGIESC(ソジエスク)という用語が使われることもあります。
それぞれ、人間の性のあり方を形づくる構成要素であり、誰もが持っています。
誰もが「多様な性のあり方」を生きる一人ひとり、と言い換えてもいいでしょう。
性的指向が異性に向き(異性愛者)、性自認が身体・戸籍上の性別と一致する人(シスジェンダー)が社会の大多数です。一方でそれぞれの要素において、多数派とは異なるあり方で生きるマイノリティ(少数者)とされる人たちがいます。
■ LGBTQ+(エルジービーティーキュープラス)とは
LGBTQ+は、レズビアン(Lesbian=L)、ゲイ(Gay=G)、バイセクシュアル(Bisexual=B)、トランスジェンダー(Transgender=T)、クエスチョニング(Questioning)またはクィア(Queer=Q)の頭文字をまとめた言葉です。
■L(レズビアン):性自認が女性、性的指向が同性に向く人
■G(ゲイ):性自認が男性、性的指向が同性に向く人
■B(バイセクシュアル):性的指向が異性・同性どちらにも向く人
■T(トランスジェンダー):出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人
■Q(クエスチョニング):自身の性のあり方について特定の枠に属さない人、わからない人、決めていない人
■Q(クィア):規範的とされる性のあり方以外を包括的に表す言葉
「+(プラス)」は、上記のカテゴリーに明示的に含まれない他の性的指向、ジェンダーアイデンティティ、性自認を包括する意味を持ちます。これにより、性の多様性を尊重し、より包摂的な表現となっています。
参考:「LGBTQ報道ガイドライン 第2版」(LGBT法連合会編)
■ 人口のおよそ3〜10%と推計されています。
日本ではさまざまな調査が行われ、人口のおよそ3〜10%の人が性的マイノリティに該当するとされています。この数字の割合は、左利きの人や血液型がAB型の人、または障害者手帳を持っている人の割合とも同じくらいの数字と言われています。
あれ?思っているより多いのかもしれないな、、、、とお感じになったかもしれません。
自分の会社や組織の人数を考えた時、3〜10%に該当する人は何人になるのか、一度考えてみてはいかがでしょうか。
■「性的マジョリティ」を指す言葉があります
性の多様性について考える際、多くの人がマイノリティに焦点を当てがちです。しかし、それだけでは不十分です。なぜなら、社会には多数派であるマジョリティが存在し、その在り方が少数派の生きづらさに影響を与えているからです。
たとえば、「なぜマジョリティは特定の名称を持たずに生きられるのか?」「なぜマイノリティだけがカテゴライズされ、名前を付けられてきたのか?」という疑問を深掘りすることで、性の多様性への理解がより深まります。こうした問いを通じて、私たちは「違い」に向き合う重要性を認識できます。
対立ではなく、「違い」を共有する
多様性を考える上で避けたいのは、「どちらが良い・悪い」という対立構造です。重要なのは、そこに「違いがある」という事実をお互いに共有し理解することです。そのためには、マイノリティの課題を取り上げるだけでなく、マジョリティが「なぜ自分のあり方を説明・表明することなく暮らしてこれたのか」という背景を考えることが欠かせません。
少数派を「かわいそうな存在」として捉えるのではなく、「当たり前に存在している人たち」として考える視点を持つことが求められます。そして、「LGBTQ+はカミングアウトしないと理解されない」といった見方から、「LGBTQ+の方々は、すでに私たちの社会に存在している」という認識を持つことが大切です。
その上で、「何が足りないのか」「どのような取り組みが必要なのか」という具体的な行動を考えることが、次のステップになります。
認識を変える第一歩とは?
職場や地域、学校などの場には、すでに多様な人々が共存しています。その中には、当然LGBTQ+の人たちも含まれているはずです。しかし現状では、彼らが名乗り出なければその存在が認識されないことがほとんどです。この状況を変えるには、「目に見えなくても、ここにいるかもしれない」という前提で考えることが重要です。この認識を持つことが、社会的な取り組みの第一歩となります。
多様性を広めるために必要なこと
多様性を考えるときには、LGBTQ+について理解を深めるだけでなく、「ヘテロセクシュアル」や「シスジェンダー」といった言葉にも目を向けることが必要です。これらの概念を含めて性の多様性を学ぶことで、より包括的な視点が得られるからです。
参考:「はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで」(石田仁著・ナツメ社)
■ 覚えておきたい用語集
・ヘテロセクシュアル(異性愛者)
・シスジェンダー(性自認が出生時に割り当てられた性別と同じ人)
・アセクシュアル、エイセクシュアル(誰に対しても性的に惹かれない人)
・アロマンティック(誰に対しても恋愛的に惹かれない人)
・Xジェンダー(性自認が出生時に割り当てられた女性・男性のいずれでもないという人)、「ノンバイナリー」と表現されることもある
・パンセクシュアル(性的指向が性別に囚われない人)
参考:「LGBTQ報道ガイドライン 第2版」(LGBT法連合会編)
■まとめ
レインボーノッツでは、SOGIE(性的指向、性自認、性別表現・ジェンダー表現)やLGBTQ+に関する研修を通じて、多様性への理解を深めるためのお手伝いをしています。企業や自治体、地域団体に向けて、実践的で分かりやすい研修プログラムを提供しており、日常の中で活用できる知識や視点を共有しています。
「職場のダイバーシティ推進に役立てたい」「自治体職員向けの啓発を進めたい」など、どのようなご相談でもお気軽にお問い合わせください。
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五十嵐 ゆり
1973年東京都生まれ。2012年、LGBTQ支援団体Rainbow Soupを発足。2015年3月にNPO法人化し、レズビアンであることをオープンにする。2015年7月、アメリカ国務省主催のLGBTプログラム研修生に選抜され、全米各地を訪問。2017年8月、オランダ・アムステルダム市より招聘を受け「international guests Amsterdam Pride 2017」プログラムに参加。
2018年、レインボーノッツ合同会社を設立。当事者としての経験や最新情報などをベースに、企業・自治体のSOGI・LGBTQ施策支援・社外相談窓口対応を展開。2019年〜2023年6月まで一社LGBT法連合会理事を務める。2023年4月より、NPO法人プライドハウス東京 共同代表に就任。
- 一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 認定トレーナー
- 筑紫女学園大学非常勤講師