レインボーノッツ合同会社

SOGIE/ LGBTQ+ コラム

(3) LGBTの人たちが職場で直面する困難

LGBTの人たちが職場で直面する困難には様々なケースがあります。カミングアウトしていない方が多いのでなかなか可視化されません。

■ 就職活動・職場でどのようなことが起きているのか

ここでは一部のみ抜粋していますが、詳細を調べたい方は、LGBT法連合会が公開している「性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト」をご覧ください。実際に寄せられた声に基づいた内容で、就職活動や職場に関わる項目には多くの事例が紹介されています。

LGBTの方々の困り事、実は就職活動の時からすでに始まっています。ある学生さんは、「就活で結婚の話題になり、性的指向をカミングアウトしたところ、面接を打ち切られた」という体験をしています。学生さんは、この企業に対してどのような印象を抱くでしょうか。中学校や高校で授業を受けたことがある人、大学で相談対応をしてもらった経験のある人、そのような若者はいま少しずつ増えています。採用担当の方々においては、SOGIやLGBTに関する知識は必須と言っても良いでしょう。

またある従業員は、「日常会話や飲み会での「ホモネタ」がとても苦痛だ」と言います。ご本人がゲイかもしれませんし、もしかしたらゲイの友人がいる人かもしれません。皆さんもこうした場面を経験したことがあるかもしれませんが、その場にLGBTの人がいたら…と想像してみましょう。あるゲイの知人は、このようなシチュエーションになった時は、「一緒になって笑ってやりすごしている」と言っていました。自分で自分のことを笑ってやりすごさないといけない、それがたびたび繰り返されるわけです。そうした苦痛が積み重なっていけば、勤続意欲やモチベーションが低下する可能性もあるでしょう。

あるトランスジェンダーの方は、「人事部に伝えた性別変更の件、どれくらいの人に知られているの分からず不安だ」と語ります。自分の大切な個人情報を、担当者はしっかり守ってくれるのだろうか。誰かに漏れたら一体どうなるのか、こうした不安感を解消する対応が求められています。

■ 日常的に積み重なる困り事や悩み。時には深刻なダメージにも。

厚労省の委託事業による報告書(2020)によると、「性的マイノリティであることを理由に、働く上で困っていること」の項目で、何らかの困り事があるとしているのは、LGBの36.4%、Tの54.5%にのぼります。

LGBTの人たちは日常生活の様々な場面で困り事や悩みを抱きながら、そして社会からの抑圧を感じながら過ごしています。その積み重なりによっては、深刻なダメージになる場合もあります。

そのように過ごしている人たちにとって、性的指向や性自認(SOGI)に関する笑いやからかいは、一体どのように受け止められるか、ぜひ考えてみてください。

五十嵐 ゆり

1973年東京都生まれ。2012年、LGBTQ支援団体Rainbow Soupを発足。2015年3月にNPO法人化し、レズビアンであることをオープンにする。2015年7月、アメリカ国務省主催のLGBTプログラム研修生に選抜され、全米各地を訪問。2017年8月、オランダ・アムステルダム市より招聘を受け「international guests Amsterdam Pride 2017」プログラムに参加。
2018年、レインボーノッツ合同会社を設立。当事者としての経験や最新情報などをベースに、企業・自治体のSOGI・LGBTQ施策支援・社外相談窓口対応を展開。2019年〜2023年6月まで一社LGBT法連合会理事を務める。2023年4月より、NPO法人プライドハウス東京 共同代表に就任。

  • 一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 認定トレーナー
  • 筑紫女学園大学非常勤講師